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🇲🇳 MONGOLIA TRAVEL SERIES
Travel Mongolia

Day 2:バイクを借りて草原へ ― 繰り返しの中を走る

青空の下、草原の道端に止めた赤いバイク
これから12日間を共にする赤いバイクと、モンゴルの草原。

ウランバートル空港の朝は早い。というか24時間営業だ。 国内線の保安検査場の前で寝ていた俺は、5時ごろ周囲の音で目が覚めた。

ウランバートル空港、保安検査場前のベンチと敷いたマット
国内線の保安検査場の前の寝床。ベンチにザックを載せ、床にマットを敷いた。

空港の朝 ― ベンチ越しの縁

シュラフに包まれたまま体を起こすと、目の前のベンチに座っているおじいさんに声をかけられた。 名前は Laidang。小柄で若々しい。日に焼けた健康的な雰囲気の人だ。

空港のベンチでLaidangさんと撮った自撮り
空港のベンチでLaidang さんと(お顔は伏せています)。

ベトナム出身だがアメリカや日本でも働いていたらしい。日本のことをけっこう知っていて、 こちらが大阪大学の学生だと言うと「いい大学だ」とほめてくれた。今でも日本に知り合いがいるそうで、 困ったことがあればメールをくれと、アドレスを教えてくれた。あとリンゴと水もくれた。 グループでの旅行らしく、同行の人たちもホテルか何かで配られた同じボトルの水を 「保安検査があって持っていけないから」と近くのベンチに置いていってくれた。

もらったリンゴと水のボトル
もらったリンゴと水。ヨーグルトは昨日買っておいたもの。

別れ際には仏教でいうところの奇跡的なめぐりあわせだね、というようなことを言っていた。 縁ということだろうか。

周囲はフライトを待つ人であふれていた。昨日ここを寝床にできたことが遠い昔のように感じる。 もらったリンゴを朝食に食べ、昨日買っておいたヨーグルトを飲むと満足した。

人の波を水の流れにたとえるなら、ぽつんと浮かぶ小島のようだった自分のマットとシュラフを片付ける。 荷物を整理しても、60Lザック、ヘルメット、サイドバッグの三つは変わらず大荷物で移動するのが手間だ。 早くバイクを借りて積み込めば少しは楽になるだろう。

7時前、スマホを充電しておこうとコンセントを探しに行く。トイレの前のコンセントは誰も使っていなかったので、 ありがたく一人で使わせてもらった。充電しながら前日の日記を書く。 睡眠の質は悪かったが、朝から優しい人と久しぶりに英会話をして適度に脳が疲れたおかげで精神は落ち着いている。

モンゴル語も挨拶と数字くらいは覚えていくつもりだった。なのにまったく頭に入っていない。 外国語の習得はいつも苦労してきたはずなのに、それを忘れて自分の頭が悪くなったのかと錯覚しだす。

タクシーでバイク屋へ ― 120,000₮は高いのか

スマホの充電が90%を超えたので、バイク屋に向かうことにする。 先人のブログに「タクシーで行くのがおすすめ」と書いてあったので、素直に従うことにした。

一階の自動ドアを出たところに乗用車が10台ぐらい止まっていた。 その先頭まで行って中をのぞき込んだりしていると、ようやく声をかけられた。 がつがつ寄ってこない。インドをはじめこれまで行った国とは空気感が違う。

料金は120,000₮(トゥグルグ)、日本円で6,000円近い。高くないかと思ったが、近くに料金表があり、 空港から市内までは100,000₮と書いてある。それを指さすと、「それは昔の値段だ」と言われた。 いかにもぼったくりのやり方っぽい。でも公式料金の2割増し程度なら、外国人旅行者への割増だとしても良心的だ。 素直に乗り込んだ。あとから思うとバイク屋は市内中心部より少し空港寄りにあったので、 もう少し安くてもよかったかもしれない。

空港のタクシー料金表
空港のタクシー料金表。市内中心部まで100,000₮とある。

ドライバーのおじいさんがスマホでGoogleマップを開いて渡してきたので、目的地を打ち込んで出発。 旅が始まった。

空港の周りはすでに草原だった。想像どおりのモンゴルだ。 乗っている韓国車が時速90kmで巡航する高速道路は、路面も設計もきれいで、 草原というかモンゴルのイメージにそぐわない唯一のものだった。

モンゴルに限らず日本でも、ひとたび道が通されるとその場所は分断される。 平地では畑が、山間部では森が。人はその分断を迂回できるが、自然はどうだろうか。 人間には見えない流れがあった場所かもしれない。他者によって区切りが設けられ、移動が不自由になる。 もしその流れが川のようなものなら、滞りさえ生まれてしまう。 遊牧民にとっての国境も同じなのかもしれない。

フロントガラスの遠くに、灰色のビル群と立ちのぼる白い煙が見えてきた。

高速道路から見たウランバートルのビル群と煙突
フロントガラスの向こうにウランバートルの街。煙突から白い煙が立ちのぼっている。

バイク屋 ― 犬とぐにゃぐにゃのクラッチ

バイク屋(Cheketours)に着いたのは8時で、門はまだ開いていなかった。調べてみると開店は9時だった。 気温は低い。日本でいえば冬本番ではないが、冬の近さを感じる秋の朝だ。 半袖にパーカー一枚ではじっとしているには寒すぎる。空港でもう一時間寝ていればよかったと悔やみながら、 持っている服を重ねて着た。

バイク屋の近くの道に止まったタクシー
8時、バイク屋の近くの道。門はまだ閉まっていた。

バイク屋も周りの家も木の板の柵で敷地を囲っていて、想像上のアメリカの田舎のような雰囲気だ。

30分ほど経った8時半ごろ、門が開いた。おばさんが俺に気づく。荷物の多さと服装から客だとは分かったようだが、 呆れた顔で「何やってんの?」と言われた。いや、ただ待っていただけなんだけど、と思いつつ敷地の奥を見ると 反対側には開いている門があった。

9時開店のはずだが、早めに店に入れてくれた。予約名を聞かれることもなく、彼女は準備を始めた。敷地には同じ型のバイクが20台ほど並んでいる。 台数が十分なのか、客が少ないのか、予約の管理はいらないのだろう。 オプションでサイドパニアを左右に着けてもらって合計192ユーロ。 基本料金13€とパニア3€をそれぞれ12日分。(13+3)×12=192。 日本のレンタルのように複雑な保険もなく、すっきりした計算式だ。

バイク屋の敷地に並ぶバイクの列
敷地の奥までバイクがずらりと並んでいる。
レンタル条件メモ
  • 店 — Cheketours(Googleマップ)
  • 料金 — 13€/日 + サイドパニア 3€/日 ×12日 = 192€
  • 預けるもの — 10万円程度の現金、またはパスポート(俺はパスポート)
  • 補償 — 壊した場合は最大10万円程度の支払い
  • 付属品 — 修理用の工具、交換用のタイヤチューブ
  • 車両 — 5速MT・200cc単気筒

10万円程度もしくはパスポートを預けなければならないらしい。金はないのでパスポートを預けた。 海外旅行中に旅券が手元にないのは大丈夫か?と不安だったが従った。

英語で書かれた注意事項の紙を渡され、読んでみる。共通テストを思い出しながら重要な情報を読み飛ばさないよう気をつけた。 いろいろ書いてあったが、ほとんどは壊したときの補償についてだった。壊した場合は最大で10万円程度 (きっとバイクの価格がそのくらいなのだろう)の支払いが必要だそうだ。 つまり、俺にできるのは何としても壊さずにここまで帰ってくることだけだ。

店の外ではおじさんとおばさんがバイクを選んでいる。俺に合うのはどれか、ということではなく エンジンがまともにかかるものを探しているようだ。不安な状況で俺はニコニコしているしかない。

敷地には犬がいた。黒っぽい毛は柔らかく密度が高そうで、寒い地域の犬という感じがして愛らしい。 大型犬とまでは言わないが、中型犬というには大きすぎる。離れて見ている分にはかわいいが、 撫でるとなると相当の覚悟が要る。

おばさんが選んだ一台を俺の近くに持ってきて、試してみるように言った。 かかっていたエンジンを一度切ってちゃんとかかるか試す。一度目はブオン、すん、と消えてしまった。 二度目はブオンとかかった直後にスロットルを開けると、素直にエンジンが回った。

店の外の道を走ってこいというので、敷地で転回して外へ出ようとスロットルを開け、クラッチをつなぐ。 バイクが動き出すのに合わせて犬が近寄ってきた。動き出したバイクに嬉しそうにじゃれてくる! しかしこちらは慣れないバイクのクラッチでエンストしそうになったり、いきなり推力が出たりして苦戦している。 そんなところに近寄られたら、ひいてしまいそうだ。想像するとおりのじゃれ方で 犬は前輪の前を右に左にと跳ね回る。向こうもそんなにバカではないと信じて、 こちらも犬の動きを右に左によけながら店の外まで出られた。

さて、肝心のバイクだがクラッチが信じられないほどぐにゃぐにゃだ。 レバーの遠近の動きに加えて、上下にも2〜3cmはぶれる。全域で剛性感がなく、 どこが半クラッチなのかをつかむまでずいぶん苦労した。最初のうちはエンストを覚悟で思い切ってつないでいた。 5速MTの200cc単気筒エンジンはまあ、とにかく頑張っていた。

OKだとおばさんに伝えて細かい荷物はパニアへ、60Lザックは後部座席と荷台の上に載せる。 バイクに括り付けるための紐は日本から持ってきていた。ところが、ザックの側面にある 荷物を外付けするためのバックルが、バイクへの固定にも使えそうな気がした。試してみると、 まさにこのためについていたかのようなジャストフィットで煩雑さを覚悟していた懸念点がひとつ消えた。

修理用の工具と交換用のタイヤチューブを渡されたので、それもパニアに入れる。 荷物の固定を確認してヘルメットにGoProをセットし、いよいよ出発だ。 気温が想像より低く、もっと分厚いジャケットを着なくて大丈夫かとおばさんに心配されたが、 身軽にレインウェアで行くと決めていた。寒ければどこかで買えばいい。

借りたバイクと自撮り、後ろで寝ている犬
荷物を積んで出発準備完了。後ろでは犬がのんびり寝ていた。

店を出て大きな道に出る。初めての海外での運転はモンゴルになった。

ウランバートル市内の道路とバイクのミラー
初めての海外での運転。ウランバートル市内の道(GoProの映像より)。

出発前の買い出し ― スーパーと行列のガソリンスタンド

まずはスーパー(Nomin・Googleマップ)へ向かう。食料とガスを買うのだ。 道路が右側通行であることを除けば、なにも難しいことはない。違和感と左折にだけ気をつける。 周囲の車の運転も穏やかで、運転のレベルは高い。

車の多いウランバートルの道路
ウランバートル市内。車は多いが流れは穏やか(GoProの映像より)。

スーパーでは食料、水、ガスを合わせて10,000円分近く購入した。 モンゴルの郊外の発展具合が未知数だったので、パニアとザックがいっぱいになるほど買い込んだ。 結果的には郊外にも食料を買えるところはあった。次に行く人は予備を入れても「3日死なない程度」の食料を買えば十分だ。

スーパーのレシートを持つ手
スーパーのレシート。合計190,072₮、約9,500円分になった(カード番号などは黒塗り)。内訳は末尾の補足に。

スーパーの後はガソリンを入れに行った。 走っているといくつもスタンドが目に付くのだが、その半分以上が開いていない。入り口がロープで閉ざされている。 数少ない営業中のスタンドは、長蛇の列が道路にまではみ出ていて、店員が一人で車をさばいていた。 UBでガソリン事情がこうなのだから、郊外はもっとひどいだろう。是が非でもここで満タンにしておきたかった。 比較的行列の短いところで15分ほど待ち、給油してもらった。

給油待ちの車が並ぶガソリンスタンド
スタンドの前に給油待ちの車が並ぶ(GoProの映像より)。

クレジットカードで支払いを済ませ、11時ごろようやくツーリングを開始した。

この日のルート。緑の丸がバイク屋で、黄色い点がスーパーと昼食の停車地点。赤い丸はこの日の終点(野営した付近)。位置は約1km精度に丸めてある。

草原へ ― 繰り返しの構造を走る

まずはこの街を出たい。日本の地方の国道沿いと大差ない景色が1時間ほど続いた。 だんだん建物が小さく、少なくなっていく。建物の間隔が広がって、その間を山と草が埋めていく。

ウランバートル郊外の道路
ウランバートルの町はずれ。
建物がまばらになり、丘が近づく道
段々と草原へ。建物の間隔が広がっていく。

ウランバートルから2時間も走ると、俺はモンゴルにいた。

草原は薄い緑色で、広くどこまでも伸びていく。なだらかな丘の頂は岩でわずかに尖っていて、 それが草原にひとつの区切りをつくっている。道はその丘と丘の間の低い鞍部を抜けていく。 舗装路は草原の上に必然性の薄いラインを描きながら、その境界線を越えていく。

草原の中をまっすぐ延びる舗装路
草原の中を道がどこまでも延びていく。

バイクは繰り返しの構造の中を走る。丘をひとつ越えると、次の草原を見下ろす形になる。 そのときの視界の雄大さは繰り返すたびに、ここがこの旅の目的地だったのだと俺を納得させた。

バイクのハンドルの向こうに続く道と丘
ハンドルの向こうに丘を越えて続く道。

バイク乗りは北海道を別格のものとして語りがちだ。雄大でどこまでも続くまっすぐな道が魅力だという。 きっとこんな感じなんだろう。

ところどころにゲルもある。数十kmごとに町というか集落も見かけて、店もあるようだ。 この日の終わりごろにはその間隔も100km近くになった。

ガソリンについても郊外にはスタンドがないのではないかと心配していた(もしそうなら俺はどうするつもりだったのか)。 でも割とあった。タンクを確認したところ燃費もよさそうで、安心材料がひとつずつ増えていく。

ホーショールと韓国人ライダーたち

12時ごろ昼飯を食べたくなった。ちょうどロードサイドに小さなレストランがいくつも並んでいるところで、 そのうちの一軒の前にバイクが3台止まっていた。見栄えのいいオフロードバイクが3台。100%観光客である。 もしかして日本人かもしれない、話ができたらいいなと思ってその店に入った。 場所はこの並び(Googleマップ)のどれかだが、正確な店は特定できていない。

店にいたのは若者3人で、声をかけると韓国人だった。全員大学生で2002年生まれ。俺の一つ下だ。 3日間のツーリングらしい。YouTubeでモンゴルツーリングの美しさを知って来たのだという。

韓国人の大学生ライダー3人と食堂で撮った自撮り
韓国から来た大学生ライダー3人と食堂で(お顔は伏せています)。

料理は彼らと同じホーショールを頼んだ。ホーショールは肉を薄い小麦粉の皮で包んで揚げた、 餃子のような形をしたモンゴルの定番料理だ。

ケチャップのかかったホーショール
ホーショール。ケチャップをかけて食べた。

自分の英語力の衰えを感じつつ楽しく話して、Instagramのアカウントを教え合った。 韓国のインスタントラーメンももらった。このラーメンは結局ウランバートルで食べることになる。

藤井風が鳴る草原の150km

食後は楽しい気持ちで走り出すことができた。その後は草原を約150km走った。

どこまでも続く草原の景色に藤井風がよく合った。これまでにないほど歌詞が身にしみて、 涙が出るほど人生を振り返らされた。 心が曲に共鳴して、あるべき波形と振動数を取り戻していくようだった。素直な形に整えられていく。

草原の道端に止めたバイクと大きな空
バイクを止めて一休み。見渡す限り草原と空。

日本でも長野の標高の高いところには、草原と呼べるような景色があった気がする。 それを1万倍ぐらいに広げたような景色だった。

初日のキャンプ ― 境界のない景色

4時ごろ幹線道路から外れて丘を少し上ると、小さな台地のような平坦な場所を見つけたので、そこにテントを張った。 車の音も聞こえず、寝るのにちょうどよさそうだった。 そこにたどり着くまでに2回ほど転んで相当焦ったが、無事だった。

丘の上に張ったテントとバイク
この日のキャンプ地。丘の上の平らな場所にテントを張った。
補足:モンゴルの草原のキャンプ事情 モンゴルでは、町や集落の外の草原にテントを張って泊まることが、旅行者にも普通に行われている。 「どこでも張ってよい」と一言で明記した公的な文書は見つけられなかったので、法律の条文と、旅行会社などのガイド情報を分けて整理しておく。 法律の側から
  • 牧草地は国有地で、個人の所有にはできない(土地法[2002年改正版]第5条)。
  • 柵や、立入りと横断を禁じる警告表示で守られていない土地には、誰でも土地に損害を与えない範囲で立ち入り、横断できる(同法第48条1項)。
  • ただし、この条文が定めているのは立入りと横断で、宿泊や野営を名指ししたものではない。野営については、慣習として広く認められていると理解しておくのがよさそうだ。
旅行ガイドの情報 現地に詳しい旅行会社のガイドは、「モンゴルには一種の自然享受権のようなものがあり、野営はほぼどこでも認められている」と説明している。 公的な資料ではなく旅行会社の解説だが、同じ趣旨の説明は複数のガイドで見つかる。あわせて挙げられている注意点は次のとおり。
  • 国立公園などの保護地域では、指定された場所での宿営や許可が求められることがある。焚き火は国立公園で禁止されていて、森林火災の季節はほかの場所でも禁じられることがある
  • 集落や文化財、観光地の近くでは、地元の制限がある場合がある。県や郡の指示が決め手になることもある
  • 木の下(嵐のときに枝が落ちてくる)と、干上がった川床(雨で急に増水する)は避ける。水辺からは100 m以上離れる
  • ゴミは持ち帰る。表土を傷めないように気をつける(モンゴルでは土壌の浸食が問題になっている)
  • 遊牧民の家畜や暮らしの邪魔にならない場所を選ぶ
最新の状況は、泊まる場所ごとに現地で確認してほしい。ここに書いたのは2026年9月に調べた時点の内容で、法的な助言ではない。 出典

テントを張って落ち着いて風景を眺める。

草原と空の色を聞かれたら、それぞれ緑と青と答えてしまうだろう。 でも正面から眺めていると、両者が境界で区切られているという感覚が起こらない。 絵に描けばどうしても輪郭線を引いてしまうのだろう。けれど眺めているうちに、 ただ広い青の、4次元的な終わりのない広がりの中に緑の丘が波立っているだけ、という気分になってくる。 宇宙から俯瞰しているような感覚だ。

パスタをゆでて食べた。紅茶も買っていたのでついでに飲んだ。食料を買いすぎたことに気づいた。

地面に置いたコッヘルで作るパスタ
パスタをゆでる。食料は買いすぎていた。

夕暮れの丘で ― 繰り返される世界

夕暮れどき、丘に登った。登った丘の向こうも草原で、その向こうには丘があった。

岩の丘から見た草原に沈む夕日
丘の上から見た夕日。

「繰り返される諸行無常」とでも言うべきか、この世界の繰り返し構造の一端が理解させられる。 本当にささいなものから大きなものまで、すべてが反復する。 結晶の構造は3次元的な繰り返しの最小のものとして、今ここにある草原の構造、惑星、太陽系、銀河と、 そのすべてに上位と下位の繰り返しの構造がある。

夕日に染まる丘の連なり
夕日に染まる丘の連なり。
夕方の草原にぽつんと立つテントとバイク
広い草原の中の小さなテントとバイク。

人の暮らしも同じようで、一人の一生の中で小さな暮らしが繰り返され、問題がたびたび起こる。 大抵は同じような人間関係の問題だったりする。輪廻転生も同じような理解から生まれた考えかもしれない。

人の場合、同じ問題が繰り返されるときは過去のどこかに原因があることが多い。 解決できるかどうかはわからなくても、小さな悪循環に陥ったときにそれを見つけて乗り越えれば、 今より大きなループへ進めるかもしれない。
草の向こうに出た月
夜になって草の向こうに月が出た。

おやすみなさい。

補足 ― レシートで見るモンゴルのスーパーの物価

この日スーパー(Nomin・Googleマップ)で買ったものの内訳をまとめておく。 レシートは23品目で合計190,072₮(約9,500円)。ガス缶や日用品も含まれている。 円換算は本文と同じく1₮≒0.05円で、2026年8月28日時点の価格だ。

品目金額(₮)約円
主食・麺47,5332,375
白米 2kg28,2901,415
パスタ 400g ×26,398320
レトルト食品4,748235
パスタ 450g4,399220
インスタント麺3,698185
菓子・お茶・ナッツ45,1172,255
ビスケット(McVitie's)11,780590
レーズン10,990550
パイ菓子 360g10,880545
ひまわりの種6,468325
紅茶(25袋)4,999250
肉・乳製品41,7982,090
ハムサラミ 450g23,1201,155
モッツァレラチーズ13,280665
牛乳 1L5,398270
日用品・調理用品32,2951,615
ガス缶(家庭用)16,990850
スプーン・フォーク7,998400
ハンドソープ(Dove)5,709285
使い捨てのカップ/碗1,59880
水14,804740
飲料水 ×2(1本 5,928₮)11,856595
ミネラルウォーター 1.5L2,948145
品名不明(レシートの表記)8,525425
Давс Enjoy 450гр6,448320
Ёотон Стандарт1,62880
Тор том44920
合計(23品目)190,072約9,500

分類は小計の大きい順に並べた。品名が分からなかったものは、レシートの表記をそのまま載せている。

食料品の値段は、日本のスーパーと比べてあまり安くはなかった。 牛乳1Lが約270円、ミネラルウォーター1.5Lが約145円、パスタ400gが約160円と、日本と大きくは変わらない。 物価の安い国だと思って食料を安く済ませようとすると、当てが外れるかもしれない。

補足 ― 2026年夏のモンゴルのガソリン事情

本文に書いたとおりウランバートルのスタンドは半分以上が閉まっていて、開いているところは道路まで行列ができていた。 あとから調べてみるとちょうど燃料不足のさなかに走っていたことが分かった。 次にモンゴルをバイクや車で走る人のために、分かったことをまとめておく(2026年9月時点の情報)。

なぜ足りなかったのか。 モンゴルには国内に製油所がなく、燃料輸入の95%以上をロシア産が占める。国内初の製油所は2028年の稼働開始を目指している段階で、 それまではロシアの供給事情がそのままモンゴルのスタンドに響く。 2026年夏はロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の影響で供給が不安定になり、8月上旬には全国のスタンドに行列ができた。 似た逼迫は2025年秋にも起きていて、ロシアがAI-92の輸出を制限した影響で行列が報じられている。

給油規制があった。 政府は8月4日からナンバープレートの奇数・偶数で給油できる日を分ける隔日制と、1回あたり50,000₮(約14L)の購入上限を導入した。 報道によるとこの規制は8月15〜16日の週末に解除されている。俺が走ったのは8月28日なので、規制が解けたあとではあった。 それでも半分以上のスタンドが閉まっていて、開いているところは行列という状況で、供給が落ち着いたとは言い難かった。 報道では5時間並んでもまだ10台手前だった人や、朝8時から並んで約9時間後にようやく給油できた人の例もあり、 それと比べると15分の待ちで給油できたのは運がよかったのかもしれない。

値段も上がった。 もっとも一般的なレギュラー相当のAI-92は、平均小売価格が8月10日時点で1Lあたり2,840₮、8月中旬には3,040₮まで上がった。 本文で使った換算(120,000₮が6,000円近く、つまり1₮≒0.05円)だと1Lあたり約150円になる。

郊外のスタンド。 現地ドライバー向けのガイドによると郊外のスタンドは小さな個人営業が多く、置いているのはAI-92と軽油だけということも多いという。 AI-95のような高オクタン価のガソリンは都市部が中心で、遠く離れた村では見つけにくいそうだ。 24時間営業とも限らない。高オクタン価を必要とする車両の場合は事前に確認しておいた方がよさそうだ。

次に行く人へ
  • ウランバートルを出る前に満タンにしておく。現地のツアー会社も出発の前日か当日に満タンにして対応している。
  • 出発直前に燃料事情の最新情報を確認する。8月上旬に出た日本語の旅行情報でも地方を周遊する旅行では特に注意が必要とされていた。
  • バイクの燃費と航続距離を把握しておく。スタンドが閉まっていたとき次の町まで行けるかの判断がしやすい。
  • 状況は日々変わる。ここに書いたのは調べた時点の情報なので、渡航前に必ず最新の情報を見てほしい。
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